【本】生きるぼくら

あなたはおばあちゃんのにぎったおにぎりがどうしてあんなにおいしいのかを知っていますか?

読み進めて行くうちに無性におばあちゃんのにぎったおにぎりが食べたくなる本でした。


生きるぼくら (徳間文庫)


物語の舞台は長野県茅野市蓼科(ながのけんけんちのしたてしな)。

映画監督の小津安二郎がこよなく愛したという蓼科高原(たてしなこうげん)を舞台に瑞々しい物語が展開していきます。

陰湿ないじめにあって高校を中退し、就職活動をしてもうまくいかず、引きこもり歴4年の24歳の青年、麻生人生は一緒に暮らしていたはずの母親がある日突然いなくなっていることに気が付きます。

母親が残してくれたのは「もう疲れた…」という手紙と一緒に置いてあった10枚の年賀状と5万円だけ。

麻生青年は年賀状と幼い頃の記憶だけを頼りに大好きだったマーサおばあちゃんのところへ向かいます。

「ばあちゃん子」の人にはたまらない作品だと思います。僕もばあちゃん子でしたので、読み進めて行くうちに自分のおばあちゃんのことを思い出して何度か目頭が熱くなる場面がありました。

おばあちゃんはどんな時も僕の味方でした。僕のやることなすことを何でも受け入れてくれて、決して怒ったりはしませんでした。

これからもずっと僕の味方だと思っていたおばあちゃんですが、歳をとらない人間などいません。自分が年をとっていくに連れて、おばあちゃんもまた年をとり、そして当たり前のことですが衰えていくんだという現実を目の当たりにした時は悲しくて仕方がありませんでした。

そんな僕と似たような現実に直面しながらも人生はおばあちゃんから「米作り」のバトンを引き継ぎます。そして、その「米作り」を通して家族や支えてくれる人たちとの絆を深めていきながら、自分を捨てたと思っていた母親がどのような想いで自分を残して出て行ったのかをやがて悟るのです。

あなたはどうやってお米ができるかを知っていますか?

読み終わった後にたまらなく今は亡きおばあちゃんのにぎったおにぎりが食べたくなりました。


▼作品データ
<著者>
原田マハ
<出版社>
徳間書店
<発売日>
・2012年9月13日