【映画】ファイティング・ファミリー

イングランド東部のノリッジという町で「WAW」というプロレス団体でレスリングジムの経営とプロレス興行で生計を立てているナイト一家。

父親の運転する車がボロボロなことからもわかるようにナイト家の家計は火の車。家族の夢は息子のザックと娘のサラヤ(ペイジ)がアメリカのメジャープロレス団体「WWE」で活躍して大金を得ることです。

そのために父親のリッキーと母親のジュリアは「WWE」へ2人の子供たちを売り込むために必死です。2人のビデオを「WWE」に送りつけてトライアウトを受けられないかと電話をかけてみますが、電話の向こうの「WWE」の人はまともに取り合ってはくれません。

そんな中、ザックは恋人のコートニーを妊娠させてしまい、ナイト一家はコートニーの両親と顔合わせを兼ねた食事をすることになります。その席で電話が鳴ります。かけてきたのは「WWE」のトレーナーのモーガンでした。彼はザックとサラヤ(ペイジ)に言いました。

「ロンドンで興行があるからトライアウトを受けに来い!」



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僕が初めてプロレスを生で観たのは社会人になってからでした。仲の良い大学時代の友人が突然、プロレスにどハマりして「一緒に行かないか」と誘われて観に行きました。

確か、三沢光晴さんが全日本プロレスから独立して立ち上げたノアの興行だったのではないかと思います。

それからしばらくの間、誘われるがままにプロレスを観に行きました。主にノアと新日本プロレスの興行が中心でした。

ノアには今やレジェントとなった三沢光晴選手、小橋建太選手、そして、高山善廣選手がいて、新日本プロレスには当時「新闘魂三銃士」と呼ばれた中邑真輔選手、棚橋弘至選手、そして柴田勝頼選手などがリング上を盛り上げていました。僕は彼らの一挙手一投足に声を荒げて声援を送っていました。

映画の中で「WWE」のトレーナーのモーガンがトライアウトを受けに来た選手たちに掛けた言葉が印象的でした。

WWEのリングに上がるために必要なのは2つ。『実力』と不可欠なのは『輝き』だ」

ここでいう「輝き」とは「才能」と言い換えてもいいのではないかと思います。
芸能の世界やプロスポーツの世界では「実力」があるのは当然で、それ以上に必要なのが「才能」です。
そして、厄介なことにこの「才能」というのは目には見えません。

一見、この映画はサラヤ(ペイジ)の華やかなシンデレラストーリーのように思われますが、実はこの映画で描かれているのはエンターテインメントの世界で活躍するプロフェッショナルの厳しさなのだと思います。

トライアウトに落ちたあとも必死に食い下がるザックに「『実力』と『才能』を兼ね備えていない人たちがするプロレスをファンはお金を払ってまでして観ようとはしないんだ。『WWE』はそういう厳しい世界なんだ」ということをトレーナーのモーガンはザックに伝えたかったのだと思います。

サラヤ(ペイジ)はイギリス人として初めて「WWE」と契約して様々な困難を乗り越えながらもスターへの道を駆け上がって行きます。

対照的に兄のザックは自分がトライアウトに合格できなかったことをなかなか受け入れられず、自暴自棄に陥ります。
しかし、そんな中でも自分の現状を正面から受け入れて、今まで通りの日々の生活の中に再び戻って行く様子もきちんと描かれていました。

物語の節目節目に出てくる本人役のドゥエイン・”ザ・ロック”・ジョンソンがおいしいところを全部持って行きますが、それはやはり彼に「輝き」があるからなのでしょう。


▼作品データ
<原題>
・Fighting with My Family
<製作年>
・2019年
<製作国>
アメリ
<監督>
・スティーヴン・マーチャント
<上映時間>
・108分
<出演>
・フローレンス・ピュー(サラヤ/ペイジ・ナイト)
・ジャック・ロウデン(ザック・ナイト)
レナ・ヘディ(ジュリア・ナイト)
ニック・フロスト(リッキー・ナイト)
・ヴィンス・ボーン(ハッチ・モーガン
・ドゥエイン・“ザ・ロック”・ジョンソン(本人役)