この映画はある男の独白から始まる。
"私は最近銀行を襲う完全犯罪を計画し実行した"
この作品はある銀行強盗が見事なまでに手際良く完全犯罪を実行する映画である。
だだし、単純な、いわゆる「ザ・銀行強盗」といった感じの話ではない。
冒頭から登場人物の様々な思惑が交錯する複雑なストーリーが展開されていく。
画面からは少しも目を離せない。そんなことをすれば物語の展開についていけないからだ。
この映画は観る側にもかなりの集中力を求めてくる作品である。
あまり余計な説明をされることなく、話がテンポ良く進んでいくため、ちゃんと観ていないと物語の展開についていけないし、話の全容が見えてこない。
銀行強盗の手際は見事としか言いようがない。
誰がやったのかすら全く知られることなく、何の犠牲も出すこともなく、犯人たちは銀行強盗をやり遂げる。
観ている方も誰が犯人だったのかは最後まで観なければはっきりとは分からないだろう。観客も煙に巻くほどの計算され尽くした手際の良さである。
ただし、私のような凡人には動機についての説明が欲しかった。
結局、犯人の動機についてはほとんど説明されないので、犯人がなぜ、この銀行を襲ったのか、そして、なぜ、この銀行にまつわるある秘密を知っていたのか、ということについては最後まで謎のままだ。
多少のモヤモヤは残るが、キレイごとだけでは生きていけない世界の一癖も二癖もある人物たちの思惑が交錯する大人の作品だった。
▼作品データ
<原題>
・Inside Man
<製作年>
・2006年
<製作国>
・アメリカ
<監督>
・スパイク・リー
<上映時間>
・128分
<出演>
・デンゼル・ワシントン(キース・フレイジャー)
・クライブ・オーウェン(ダルトン・ラッセル)
・ジョディ・フォスター(マデリーン・ホワイト)
・クリストファー・プラマー(アーサー・ケイス)
・ウィリアム・デフォー(ジョン・ダリウス)
・キウェテル・イジフォー(ビル・ミッチェル)