【本】「天才」たちの物語は「凡人」には訳がわからなかった。恩田陸「蜜蜂と遠雷」を読んでの感想
第6回芳ヶ江(よしがえ)国際ピアノコンクールを舞台にした風間塵 、栄伝亜夜 、高島明石 、マサル・カルロス ら4人の天才ピアニストたちの物語。
連載期間は7年、全71回と長期に渡る連載だった。
途中からピアノの演奏中の描写が宗教体験みたくなってきて、読み進めていくのが、ちょっと辛くなって来た。
才能ある、音楽の神様に選ばれた「あちら側」の人たちの物語。感情移入して読み進めていくことはできなかった。
「送葬のフリーレン」に出てくるリュグナーの言葉を借りてこの作品を評するとこんな感じ。
天才たちの物語は嫌いだ。彼らには積み重ねたもののの美しさがない。
●作品データ
<著者>
・恩田陸(おんだりく)
<発行元>
・幻冬舎
<発行年>
・2016年
<受賞歴>
・第156回(2016年下半期)直木賞
・第14回(2017年)本屋大賞
<オススメ度>
★★
【映画】面白いのだが……「オブリビオン」
●作品データ
⚫︎製作国:アメリカ
⚫︎公開年:2013年
⚫︎上映時間:2時間4分
⚫︎監督:ジョセフ・コシンスキー
⚫︎出演
・トム・クルーズ(ジャック・ハーパー):ドローンの修理者。ジャックのクローン。
・アンドレア・ライズボロー(ヴィクトリア):通信担当士官。
・オルガ・キュリレンコ(ジュリア・ルサコーバ):宇宙船からジャックが助け出した女性。ジャックの妻。
・モーガン・フリーマン(マルコム・ビーチ):スカヴのリーダー。
●オススメ度
★★★
聞いたことがある名前だと思ったら「トップガン マーヴェリック」と同じ監督だった。
映像もキレイで世界観が面白く、出てくる乗り物や武器もカッコよくて序盤から話に引き込まれるものの、最後の盛り上がりにイマイチ欠けるという感じだった。
【映画】みんなスパイが大好きなのだ!「ザ・ユニオン」
「ミッション・インポッシブル」「007」「ボーン・アイデンティティ」「キングスマン」「アトミック・ブロンド」などなど。とにかくスパイ映画は枚挙にいとまがない。
映画の中でスパイを演じているのもトム・クルーズ、ダニエル・クレイグ、マット・デイモン、タロン・エガートン、コリン・ファースと世界の誰もが知っているスーパースターばかり。このことからも分かるように私も含め、世の中の人はスパイが大好きである。
この「ザ・ユニオン」もコテコテのスパイ映画である。ただし、このユニオンはあまり派手なスパイ組織ではない。
有名校のプリンストンやハーバード、イェールやオックスフォードから採用せず、目立たない人物を求める。町を作り、製造ラインを動かす者、つまり「労働者」たちのスパイ組織なのである。
とにかくこの映画はツッコミどころが満載な映画である。マーク・ウォルバーグには目をつぶることにしても、ハル・ベリーやJ・K・シモンズはとても「ブルーカラー」の労働者には見えない。
それに、わずか2週間の訓練を受けただけで40を過ぎた、いや50に近いと思われる建設作業員の男が諜報活動の最前線で活躍すると言うのはあまりにも無茶な話だ。
話の内容もどこかで見たことがあるような内容で全く目新しさなんてものはない。
しかし、主演の2人の圧倒的な存在感と話のテンポが良いのでちょっとしたスキマ時間に見るなら最適な映画である。
●作品データ
<製作国>
・アメリカ
<配信年>
・2024年
<上映時間>
・1時間49分
<監督>
・ジュリアン・ファリノ
<出演>
・マーク・ウォルバーグ(マイク)
・ハル・ベリー(ロクサーヌ・ホール)
・J・K・シモンズ(トム・ブレナン)
<オススメ度>
★★★
【本】「海賊と呼ばれた男」を読んでいたらここまで「無私」を貫ける人間が本当にいたのかと逆に疑わしくなってしまった
石油業界大手「出光興産」の創業者である「出光佐三」をモデルにしたというこの作品。
この作品を手に取るまで徹底的に「無私」を貫き、人のため、さらには「日本」のために自分の人生を費やした人間がいたという事実を知らなかった。
読み進めていくうちに果たしてここまで「清廉潔白」に生きることができた人間がいたのかと逆に疑わしくなってしまうほどだった。
この作品で描かれていることが本当に事実だとすればかつての日本に「出光佐三」という素晴らしい人間がいたということを同じ日本人として誇らしく感じた。
この出光興産の創業者である「出光佐三」という人物はもっと多くの人たちに知られてしかるべき人物であると思う。
●作品データ
<発行年>
・2012年
<著者>
・百田尚樹(ひゃくたなおき)
<発行元>
・講談社
<受賞歴>
・第10回本屋大賞(2013年)
<オススメ度>
★★★★
【映画】アル・パチーノの演技に痺れる「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」
校長先生の車に学生がいたずらをしたからといってその事件の犯人ではなく、目撃者を公開処刑のような全校集会を開いて晒し者にするのはいくら何でもやり過ぎだと個人的には思うのだが、それを言ってしまっては物語は始まらない。
ただし、この映画に関しては作品における「物語」のウエイトはそれほど高くはないように思える。
それはこの映画はただただひたすらに名優「アル・パチーノ」の熟練された演技を堪能する映画だからだ。
ギャング役も良いが、人間味溢れる全盲の退役軍人を演じたこの映画の「アル・パチーノ」の演技は本当に素晴らしい。
ワンシーンしか登場しないがガブリエル・アンウォーの瑞々しい佇まいにしばし酔いしれ、全編を通して「アル・パチーノ」の集大成とも言える演技を堪能する。これはそんな映画である。
●作品データ
<原題>
・Scent of a Woman
<製作国>
・アメリカ
<公開年>
・1993年
<上映時間>
・2時間37分
<監督>
・マーティン・ブレスト
<出演>
・アル・パチーノ(フランク・スレード中佐、全盲の退役軍人)
・クリス・オドネル(チャーリー・シムズ、名門ベアード高校の苦学生)
・ジェームズ・レブホーン(ベアード高校の校長)
・フィリップ・シーモア・ホフマン(ジョージ・ウィリス・Jr、シムズの同級生)
・ガブリエル・アンウォー(ドナ)
<受賞>
・第65回アカデミー賞主演男優賞
<評価>
★★★★