【第1回本屋大賞受賞作品】数学を勉強していたらもっと楽しめたのかもしれない……「博士の愛した数式」を読んでの感想

心が洗われる」作品というのはきっとこういう作品のことを言うのだろう。本屋大賞第1回受賞作品に値する素晴らしい作品だった。

映画化もされ、発売当時にはかなり話題となったこの作品。もちろんこの作品のことは知っていて、いずれは読んでみたいとは思っていた。

しかし、タイトルの中に私が苦手な「数式」という言葉がが入っていたため、手に取るまで時間がかかってしまった。

この作品は事故で頭に重い障害を負ってしまった記憶が80分しか持たない数学者とそこへ家政婦としてやってきたシングルマザーとその子どもの交流を描いた物語である。

「たっぷり食べなくちゃいけないよ。子供は大きくなるのが仕事だ」

「最上の部位は最年少の者へ」

「子供の心配をするのが、親に課せられた一番の試練だと、誰かの本に書いてあった」

記憶が80分しか持たない数学者、通称「博士」の子どもに対する言動は子を持つ親として感心させられることばかりだった。
果たして自分が子どもに対して博士のように振る舞うことができているのだろうかと反省しきりだった。

友愛数」、「自然数」、「素数」、「完全数」など、分からない数学の用語が出てくるとページをめくる手を止めて用語の意味を調べながら読んだ。ある程度数学の知識がある人なら私のように分からない用語が出てくるたびに用語を調べながら読む必要もなく、「博士」の言う数字や公式の美しさ、言葉の意味や重みをしっかりと味わうことができたのかもしれない。

学生の時にもっと数学を勉強していればと後悔した。数学の知識があればより味わい深い作品になるのかもしれない。だたし、無くても十分に楽しむことができる作品だった。自分の子どもが大きくなったら読ませたい。


●作品データ
<発行年>
・2003年
<著者>
小川洋子
<発行元>
・新潮社